[読書・本] カテゴリー・アーカイブ
| ☆最近の読書65 『資本主義は何処へ行く』-<佐和隆光/著> | (2008年12月21日) |
| ☆最近の読書64 『日本経済を襲う二つの波 サブプライム危機とグローバリゼーションの行方』-<リチャード・クー/著> | (2008年12月10日) |
| ☆最近の読書63 『大恐慌のアメリカ』-<林敏彦/著 岩波新書>を読む | (2008年11月27日) |
| ☆最近の読書62 『サブプライムを売った男の告白 米国住宅金融市場の崩壊』-<金井真弓/訳> | (2008年11月20日) |
| ☆最近の読書61 『ヴェトナム新時代 「豊かさ」への模索』-<著者 坪井善明/著> | (2008年11月07日) |
| ☆最近の読書60 『ドル覇権の崩壊 静かに恐慌化する世界』-<副島隆彦/著> | (2008年11月02日) |
| ☆最近の読書59 『ウォール街のマネー・エリートたち ヘッジファンドを動かす人びと』-<大井幸子/著> | (2008年11月02日) |
| ☆最近の読書58 『アジア三国志 中国・インド・日本の大戦略』-<ビル・エモット/著> | (2008年09月23日) |
| ☆最近の読書57 『ムツゴロウの遺言』-<三輪節生/著 石風社> | (2008年08月08日) |
| ☆最近の読書56 『宗教からよむ「アメリカ」』-<森孝一/著 講談社刊> | (2008年08月03日) |
| ☆最近の読書55 『アメリカの高校生が読んでいる経済の教科書』-<山岡道男/著 浅野忠克/著> | (2008年08月02日) |
| ☆最近の読書54 『地域切り捨て 生きていけない現実』-<金子勝/編著 高端正幸/編著> | (2008年07月31日) |
| ☆最近の読書53 『金融権力 グローバル経済とリスク・ビジネス』-<本山美彦/著>岩波新書 | (2008年07月09日) |
| ☆最近の読書52 『「わたし」を探険する』 岩波書店刊 村田純一/著 | (2008年06月11日) |
| ☆最近の読書51 『帝国 グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』以文社刊 | (2007年12月29日) |
| ☆最近の読書50 『集団的自衛権とは何か』豊下楢彦/著 岩波新書 | (2007年12月24日) |
| ☆最近の読書49 『「慰安婦」問題とは何だったのか』 大沼保昭/著 中公新書 | (2007年12月24日) |
| ☆最近の読書48 『清冽の炎』神水理一郞/著 花伝社 第3巻 | (2007年12月24日) |
| ☆最近の読書47 『ポストモダンの思想的根拠 9・11と管理社会』岡本裕一朗/著 | (2007年12月15日) |
| ☆最近の読書46 『左右の安全』アーサー・ビナード | (2007年12月15日) |
| ☆最近の読書45 『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』水野和夫/著 | (2007年07月25日) |
| ☆最近の読書44 『小泉政権』内山 融/著 中公新書 | (2007年07月06日) |
| ☆最近の読書43 『想像の共同体』ベネディクト・アンダーソン/著 | (2007年07月06日) |
| ☆最近の読書42 『国家の自縛』佐藤優/著 産経新聞社 | (2007年07月01日) |
| ☆最近の読書41 『親米と反米』吉見俊哉/著 岩波新書 | (2007年06月22日) |
| ☆最近の読書40 『サルトル 「人間」の思想の可能性』海老坂武/著 岩波新書 | (2007年05月26日) |
| ☆最近の読書39 『スピリチュアルにハマる人、ハマらない人』香山リカ/著 幻冬舎新書 | (2007年05月26日) |
| ☆最近の読書38 『9条どうでしょう』内田樹/他著 毎日新聞社 2006 | (2007年05月22日) |
| ☆最近の読書37 『ユナボマー爆弾魔の狂気』 田村明子/訳 ベストセラーズ | (2007年05月10日) |
| ☆最近の読書36 『平和憲法』杉原泰雄/著 岩波新書 | (2007年05月05日) |
| ☆最近の読書35 『世界』2007/01月号 岩波書店 | (2007年04月30日) |
| ☆最近の読書34 『世界』2007/03月号 岩波書店 | (2007年04月25日) |
| ☆最近の読書33 『核武装論』西部邁/著 講談社現代新書 | (2007年04月24日) |
| ☆最近の読書32 『軍産複合体のアメリカ』宮田律/著 青灯社 | (2007年04月20日) |
| ☆最近の読書31 『日本の外交と安全保障』言論ブログ | (2007年04月20日) |
| ☆最近の読書30 『アメリカ以後』田中宇/著 光文社新書 | (2007年04月17日) |
| ☆最近の読書29 『アメリカ産牛肉から、食の安全を考える』 | (2007年04月13日) |
| ☆最近の読書28 『地域再生の条件』本間義人/著 岩波新書 | (2007年04月02日) |
| ☆最近の読書27 『私物国家 日本の黒幕の系図』広瀬隆/著 光文社(1997年) | (2007年03月30日) |
| ☆最近の読書26 『赤い楯』 広瀬隆/著 集英社刊 | (2007年03月20日) |
| ☆最近の読書25 『野中広務 差別と権力』 魚住昭/著 講談社 | (2007年03月13日) |
| ☆最近の読書24 『ウェブが創る新しい郷土 地域情報化のすすめ』丸田一著 講談社現代新書 | (2007年02月28日) |
| ☆最近の読書23 『日米開戦の真実』佐藤優著 小学館 | (2007年02月20日) |
| ☆最近の読書22 『日常世界の構成』 バーガー/ルックマン共著 新曜社 | (2007年02月14日) |
| ☆最近の読書21 『仕組まれた9.11 アメリカは戦争を欲していた』田中宇著 | (2007年02月10日) |
| ☆最近の読書20 『昔、革命的だったお父さんたちへ』平凡社新書 | (2007年02月05日) |
| ☆『単一民族神話の起源』(新曜社)が江別市情報図書館に入った | (2007年01月19日) |
| ☆最近の読書19 『韓国併合』海野福寿著 岩波新書 | (2006年12月13日) |
| ☆最近の読書18 『検証 日韓会談』高崎宗司著 岩波新書 | (2006年12月06日) |
| ☆最近の読書17 『古代ローマ帝国』岩波新書 吉村忠典著 | (2006年11月24日) |
| ☆最近の読書16 『対話の回路 小熊英二対談集』 新曜社・2005年刊 | (2006年09月26日) |
| ☆最近の読書15 『清水幾太郎 ある戦後知識人の軌跡』小熊英二著 | (2006年09月26日) |
| ☆最近の読書14 『戦争が遺したもの』新曜社 2004年刊 | (2006年09月15日) |
| ☆最近の読書13 『謀略の海』北海道新聞社刊 1998年刊 | (2006年09月14日) |
| ☆最近の読書12 小熊英二著『民主と愛国』新曜社 | (2006年09月04日) |
| ☆最近の読書11 『言論統制』 佐藤卓己著 中公新書 2004年刊 | (2006年08月21日) |
| ☆最近の読書10 『YOSAKOIソーラン祭り 街づくりNPOの経営学』2002年刊 | (2006年08月17日) |
| ☆最近の読書9 『メディア社会』佐藤卓己著 岩波新書 | (2006年08月07日) |
| ☆最近の読書8 『オウムと9.11 日本と世界を変えたテロの悲劇』島田裕巳著 | (2006年07月22日) |
| ☆最近の読書7 2つの『丸山真男』岩波新書とちくま新書 | (2006年07月19日) |
| ☆最近の読書6 『テロ後』藤原帰一編(岩波新書) | (2006年07月01日) |
| ☆最近の読書5 『M2:思考のロバストネス』(インフォバーン) | (2006年06月21日) |
| ☆最近の読書4 『社会学入門』(岩波新書/見田宗介著) | (2006年06月07日) |
| ☆最近の読書3 『政治の教室』『憲法とは何か』 | (2006年06月03日) |
| ☆最近の読書2 『エイリアンズ』(インフォバーン) | (2006年05月24日) |
| ☆共謀罪、今国会での成立難しいとの認識 民主幹事長 | (2006年05月21日) |
| ☆最近の読書1 『痛快!憲法学』『日本人のための宗教原論』 | (2006年05月19日) |
| ☆最近の読書0 『M2われらの時代に』『ニッポン問題』 | (2006年05月10日) |
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2008年12月21日
☆最近の読書65 『資本主義は何処へ行く』-<佐和隆光/著>
著者 佐和隆光/著
出版社名 NTT出版 (ISBN:4-7571-2091-5)
発行年月 2002年12月
サイズ 257P 20cm
価格 1,680円(税込)
テレビをつければ、毎日のように派遣・期間労働者がクビを切られたという話ばかりです。あるいは、正規労働者にも首切りの話が出始めています。世界大恐慌の影響がじわじわと出始めています。この本は、2002年に出版された本ですが、この本の題名は「資本主義は何処へ行く」ということです。資本主義そのものを世界的金融危機の今こそじっくり考えなければならない時期に我々は置かれているのだでしょう。そういう意味で2002年出版の本でも全く色あせしていない本だとおもいます。
筆者は、現代のこの日本を工業化社会から「ポスト工業化社会」への移行期の最中にあるといいます。こういう認識の元、金融、情報、通信、サービス産業が主な産業になる時代になる中、従来型の工業化社会も併存しつつすすんでいくわけですが、それに適応できる体制は十分にできていないのが実情で、皆さん苦しんでいるわけです。どうやったら適応できる体制になるのか、この本を読みながら考えていますが、そもそも、ポスト工業化社会のイメージがわかない。この本が書かれて6年ほど経ちますが、製造業にも情報技術(IT)を取り入れて、生産プロセスと経営プロセスを抜本的に改変してきてはいる。労働市場の流動性も大幅に進められた。金融、通信、情報などのソフトウェアー産業もすすんでいるように見えます。それでも、経済のグローバル化に太刀打ちできない。日本の場合、経済のグローバル化を端的にイメージするには「中国経済の台頭」を思い浮かべればよいと、リチャード・クーはいう。金融市場主義を究極まで推し進めていった結果、世界大不況に陥ったし、労働市場の流動性を究極まで推し進めていった結果、金融危機で世界同時不況に陥り派遣労働者・期間労働者の首切りがいとも易々と推し進められている。世の中、ますます悪くなっていくように感じているのは私だけではないだろう。失業したとしても、それを国民皆でささえる「リスクの共同管理」の仕組みが全く不十分なのが現状だ。著者のいうところのポジティブな福祉への改革が焦眉の課題だと思います。
9.11同時多発テロに対して「市場原理主義に対するイスラム原理主義の衝突」という視点は、非常に説得力のある考えだと思いました。
それから、市場主義を突き詰めていくと市場は「暴力化」する、という考えは、将に今われわれが直面している世界大恐慌を目の当たりにしていて実感できる重要なキーポイントだと思います。
大したことではありませんが、P12に書かれている「インターネットは社会主義を崩壊させるほどの強い力を持った」というのは、明らかに間違い。著者自身が「大量の情報を高速通信できるようになったのは、90年代に入ってから」と書かれているにもかかわらずそのように書くのは明らかに矛盾で混乱がある。
本の内容
アメリカのユニラテラリズム(一国主義)。21世紀「最初の10年」に生起する「変化」。抗しがたい「潮の流れ」グローバリゼーション。「リスクと不確実性の時代」を洞察する。
目 次
第1章 グローバリゼーションは世界をどう変えるのか
第2章 九・一一同時多発テロは二つの原理主義の衝突?市場原理主義に歯向かったイスラム原理主義
第3章 日本型資本主義は何処へ行く?市場主義改革と「第三の道」改革の同時遂行を
第4章 平等と福祉のパラダイム・シフト
第5章 なぜいま日本の構造改革なのか
第6章 中国人・華人経済圏の形成と日本の活路
著者情報
佐和 隆光(サワ タカミツ)
1942年和歌山県生まれ。東京大学経済学部卒。スタンフォード大学研究員、イリノイ大学客員教授等を経て、現在、京都大学経済研究所所長。専攻は計量経済学、統計学、環境経済学
posted by 日下部理恵 at : 2008年12月21日 23:19 | コメント (0) | トラックバック (0) | 読書・本 (68)
2008年12月10日
☆最近の読書64 『日本経済を襲う二つの波 サブプライム危機とグローバリゼーションの行方』-<リチャード・クー/著>
著者 リチャード・クー/著
出版社名 徳間書店 (ISBN:978-4-19-862553-5)
発行年月 2008年06月
サイズ 326P 20cm
価格 1,785円(税込)
今まで経済に関する本、とりわけサブプライム問題に端を発する金融危機に関する本を短期間に数冊読んだが、この本は最も読み応えがあり信頼できる分析がされているのではないかと、素人ながら感じています。著者は、しきりに「バランスシート不況」ということを問題にします。これは、著者の独創的な分析のようですが、素人判断ながら説得力はものすごくあるように思いました。これからもこの著者の本は注目しなければならないと思っています。一度、同書を手にとって読んでもらいたいです。買って読んで絶対損しない本です。何か明るい展望とはいえないまでも、ちょっとしたあかりがこの世の中に見えた気がしました。それから、政治学者や政治評論家が書いた本をいくら読んでも日本の政治はわかりにくいのだが、このエコノミストが分析した日本政治は、非常に的確で説得力を感じました。竹中平蔵などの経済学者あがりの政治家が、如何に的はずれなことをしているかがリチャード・クーによって暴かれるあたりは、胸がスーとなります。更に、日銀の政策も見直しました。クー氏は、高く評価しています。
本の内容
米住宅バブル崩壊とともに噴出してきたサブプライム問題、ドル危機、食糧・資源の高騰など、いま世界が直面している危機は旧来の経済学ではまったく対応できない!バランスシート不況の分析で世界から注目を浴びるリチャード・クーが、世界大恐慌を回避するためにいま日本と世界はどう対処すべきか、明確な見取り図と処方箋を提示する。
目 次
第1章 サブプライム問題は戦後最悪の金融危機(いま世界経済が陥っている危機は大恐慌以来最悪の事態
カウンターパーティー・リスクがインターバンク市場を凍りつかせた ほか)
第2章 住宅バブル崩壊のアメリカはバランスシート不況(「大恐慌」以降、アメリカが初めて経験する住宅価格の崩落
住宅価格下落と延滞率増の悪循環に襲われる米国 ほか)
第3章 ドル危機に世界はどう対処すべきか(アメリカはドル安誘導に失敗、巨額の貿易赤字だけが残った
ドル安をめぐって金融当局と議会の立場が逆転 ほか)
第4章 日本はバランスシート不況を脱却できたか(日本を襲ったバランスシート不況は今どこまで来たか
日本企業のバランスシートは改善したが、問題点がないわけではない ほか)
第5章 日本に襲いかかるグローバリゼーションの大波(日本にとってのグローバリゼーションとは「中国の台頭」のこと
欧米が経験した試練をこれから経験する日本 ほか)
著者情報
クー,リチャード(Koo,Richard C.)
1954年、神戸市生まれ。76年カリフォルニア大学バークレー校卒業。ピアノ・メーカーに勤務した後、ジョンズ・ホプキンス大学大学院で経済学を専攻し、FRBのドクター・フェローを経て、博士課程修了。81年、米国の中央銀行であるニューヨーク連邦準備銀行に入行。国際調査部、外国局などでエコノミストとして活躍し、84年、野村総合研究所に入社。現在、研究創発センター主席研究員、チーフエコノミスト。98年から早稲田大学客員教授、99年から防衛研究所防衛戦略会議委員も務める
posted by 日下部理恵 at : 2008年12月10日 12:24 | コメント (0) | トラックバック (0) | 読書・本 (68)
2008年11月27日
☆最近の読書63 『大恐慌のアメリカ』-<林敏彦/著 岩波新書>を読む
著者 林敏彦/著
出版社名 岩波書店 (ISBN:4-00-430038-X)
発行年月 1988年09月
サイズ 228P 18cm
価格 777円(税込)
今から20年も前に出た本ですが、第1章株式市場-を読んでみると、いま現在起きている金融危機のことを描いている錯覚に陥るのは私だけではないだろう。実際は、いまから79年も前の1929年10月のニューヨーク証券取引所の株価暴落や株価の乱高下を描いているのだが。この本を読んでいて思ったのは、これから数年間続く大不況・大恐慌の困難さや苦悩を覚悟せねばならないということです。もうすでに、派遣労働者などが首切りにあっているのを思うと、その感を深めざるを得ないです。お金持ちは別として、一般的な庶民は、いつこの大不況で失業するかもしれないという恐怖と戦わねばならないでしょう。
1929年の株価の大暴落をへて世界が大恐慌へ転がり落ちるように落ちていった。その後何年間も立ち直れなかった。そうこうしている内に、ドイツはヒトラーが政権を握ったし、日本は満州事変を起こして15年戦争へと転げ落ちていった。戦争や侵略で物事を「解決」しようとした国もあったわけです。ソ連邦は、計画経済を進めていた。
大恐慌というのは、歴史の画期を作るくらいのインパクトがあるものであって、生半可な覚悟で乗り切れるようなものではないということがわかってきます。恐れおののく気持ちが先に立つのだけれど、唯一の希望は、1929年の経験を私たちは持っているということ。経済学の蓄積された知見もあるし、世界的に協調して事に当たるという政策的な行動もあります。それから、第3次世界大戦を突き進んでいく状況ではないということを考えると、まだ希望は持てるような気がします。
出版社/著者からの内容紹介
一九二九年十月,ニューヨークを株価の大暴落が襲った.それは繁栄を謳歌していたアメリカ社会を奈落の底に突き落とす契機となる.大量の失業者,経済活動の停滞――未曽有の大不況は様々な悲劇をアメリカ社会に引き起こした.大不況の原因はどこにあったのか? ニューディール政策は有効だったのか? 気鋭の経済学者が時代の全貌を描く.
目 次
第1章 株式市場
国民的熱狂
大暴落
第2章 20年代の繁栄
革新派の時代からノーマルシーへ
緊張から弛緩へ
理想の再構築
第3章 大不況
たち昇る暗雲
未曾有の大不況
希望が死ぬとき
第4章 ニューディール
ニューディール
夢と献身の時
ニューディールの成果
第5章 大不況の経済学
独占と過少消費
景気循環と長期停滞
アメリカ新古典派とケインズ
マネタリスト論争
ためらうアメリカ
エピローグ
posted by 日下部理恵 at : 2008年11月27日 03:55 | コメント (0) | トラックバック (0) | 読書・本 (68)
2008年11月20日
☆最近の読書62 『サブプライムを売った男の告白 米国住宅金融市場の崩壊』-<金井真弓/訳>
サブプライムローンの破綻を起点にした世界的な金融危機。もはや世界大恐慌は避けられないと考えても間違いはないでしょう。その原因の一端であるサブプライムローンを売っていた人物による赤裸々なサブプライムローン業界の告白です。日本でも、80年代後半に不動産バブルがあったのを記憶している人も多いと思いますが、サブプライムローン問題は、住宅を取得するほどの蓄えや収入がないのに住宅バブルによって住宅を取得できるようになってしまった米国で、何故そのような仕組みが出来上がってしまったのか、つまり、インチキな仕組みが出来上がってしまったのかを現場のサイドから記述されています。現在の世界的な金融危機を原因までさかのぼって調べたい人に向いている本かもしれません。
著者/訳者名 リチャード・ビトナー/著 金森重樹/監訳 金井真弓/訳
出版社名 ダイヤモンド社 (ISBN:978-4-478-00589-7)
発行年月 2008年07月
サイズ 280P 19cm
価格 1,680円(税込)
本の内容
サブプライム業界に最前線で関わってしまったレンダー(貸付業者)の懺悔と糾弾。
(1)一握りのリーダーの不正行為で引き起こされる大半のビジネスの厄災と異なり、業界の端から端まで広がる、体系的な問題の結果だということ。
(2)全米国人の65%が住宅を所有しているせいで、これまでにないほど多くの人に広範囲の影響を与えた。
(3)不動産市場の現在の下落が止まって損益の計算がされたら、損失額は何兆ドルにもなるだろう。
目 次
第1章 転換点
第2章 サブプライムローンというビジネス
第3章 ブローカー:モーゲージ・ファイナンスの弱点
第4章 ローン借り入れのための芸術的な手口
第5章 ウォール街と格付け機関:最悪の強欲者たち
第6章 断片をひとつにまとめる
第7章 再び軌道に乗る
著者情報
ビトナー,リチャード(Bitner,Richard)
コーネル大学とノーザン・アリゾナ大学で学位を取得後、GEキャピタルやGMAC(ゼネラルモーターズの金融子会社)で住宅金融の仕事に9年間携わった後、2000年9月にサブプライムローン会社、ケルナー・モーゲージ・インヴェスツメント社をテキサス州ダラスに設立、取締役を務める。2005年末に事業の悪化からサブプライム業界を離れ、住宅ローン業界に関する執筆・講演活動を始める。現在は出版とコミュニケーション関連事業の会社、LTVメディアの代表取締役
金井 真弓(カナイ マユミ)
税理士事務所、損害保険会社などで勤務後、フリーの訳者として独立
posted by 日下部理恵 at : 2008年11月20日 16:25 | コメント (0) | トラックバック (0) | 読書・本 (68)
2008年11月07日
☆最近の読書61 『ヴェトナム新時代 「豊かさ」への模索』-<著者 坪井善明/著>
著者/訳者名 坪井善明/著
出版社名 岩波書店 (ISBN:978-4-00-431145-4)
発行年月 2008年08月
サイズ 254,4P 18c
価格 819円(税込)
ベトナムについて何を知っているだろうと考えた時、最近では、日本の女性達がベトナム旅行をしているとか。どういう目的なのか? ベトナム料理か、あるいはベトナムの雑貨が目的? ベトナム戦争といっても、すでに終結したのが1975年でしたから、もう知らない人の方が多いのかもしれません。ベトナムは、それまで30年あまり独立のための戦争をしていたことを頭の片隅に置いておいてほしい。30年も戦争? 日本の敗戦からだから1945年から1975年まで。だから30年になる。しかし、その前にもフランスの植民地だったり、日本軍の占領時代もあったから30年どころではないのだ。そう考えると、何と過酷な運命に置かれた国だろうと思う。ベトナム戦争中は、戦略爆撃機B52によって枯れ葉剤がばらまかれ、これは、別の言い方をすれば、ダイオキシンをB52によってばらまかれたと言ってもいいものだ。何と、極悪非道なことをされたのだろう!
ベトナムがアメリカとの戦争で勝利して、世界の人達は、少なくとも反戦ということに意識がまわっていた人達は、ベトナム人の闘いを尊敬の眼差しで見ていたのもつかの間、程なく隣国のカンボジアへと侵攻していったベトナムには失望を持った人達も多かったであろう。中国が中華人民共和国を打ち立てた余勢で独立国・チベットを武力併合したり北朝鮮軍と合同で南進して朝鮮戦争になったり、という構図と同じであった。勝利すると、どこか気が大きくなるもののようだ。
1979年に中国とベトナムが戦争をしたという記憶をお持ちの方もいるでしょう。16日間で終わった、とこの本を読んで知った。中国は、アメリカの了解を取り付けて行ったと知った。その頃は、中国とソ連が仲が悪く、ベトナムはソ連に与していたから、戦争も起きたのだろう。隣国カンボジアは、ポルポト政権が毛沢東主義を極端なかたちで政策を実行して、自国民を大量虐殺をしていたのも、その当時の政治情勢に大きく影響している。ベトナムは、カンボジアにヘンサムリン政権という傀儡政権をつくって10年以上もカンボジアに干渉し続けていた。カンボジアから完全撤退したのが1989年の9月であった。
表面的に知っていることを思いつきで書いたが、ベトナムの過去と現在を現実的にも理論的にも包括的に知るには、この本が最適なように思いました。新書だからたかだか250ページ。でも、コンパクトにまとまっていて、しかも、学者の書いたものだから、理論的にもまとまった書物として読むことができます。共産主義政権の独裁を、今後どのように民主化していくのか、というような問題を考えるのに参考になると思います。
本の内容
ドイモイ(刷新)政策採用から二十余年。米国と国交を正常化し、ASEANやWTOへの加盟も果たして国際社会への復帰を遂げた今、ヴェトナムはどこへ向かっているのか。未曾有の戦争の後遺症を抱えながら、一方でグローバル化の波にさらされる中、ひたむきに幸福を求める人々の素顔に迫り、日越関係の明日を展望する。
目 次
第1章 戦争の傷跡
第2章 もう一つの「社会主義市場経済」
第3章 国際社会への復帰
第4章 共産党一党支配の実相
第5章 格差の拡大
第6章 ホーチミン再考
第7章 これからの日越関係をさぐる
終章 新しい枠組みを
著者情報
坪井 善明(ツボイ ヨシハル)
1948年埼玉県生まれ。1972年東京大学法学部政治学科卒業。1982年パリ大学社会科学高等研究院課程博士。1988年に、渋澤・クローデル賞、1995年に、アジア・太平洋特別賞受賞。現在、早稲田大学政治経済学術院教授。専攻はヴェトナム政治・社会史、国際関係学、国際開発論
posted by 日下部理恵 at : 2008年11月07日 22:13 | コメント (0) | トラックバック (0) | 読書・本 (68)
2008年11月02日
☆最近の読書60 『ドル覇権の崩壊 静かに恐慌化する世界』-<副島隆彦/著>
著者 副島隆彦/著出版社名 徳間書店 (ISBN:978-4-19-862010-3)
発行年月 2007年07月
サイズ 254P 20cm
価格 1,575円(税込)
この著者の本を読むのは初めてです。昔、研究者の英和辞書を徹底的に批判して裁判沙汰になったことは知っていますが、それ以来の邂逅です。近頃の金融危機で、この問題をどのように考えたらいいか、調べるため公立図書館のサイトで検索していたらこの本に出会いました。
かなり個性の強い本ですし、著者です。個性が強いのだけど田中宇氏とも違うし、反中国・親米・親靖国神社の櫻井よしこ氏とも違う評論家です(たまたま、最近読んだ評論家を持ち出しただけです)。サブプライムローン問題が根っこにあってアメリカの大手投資銀行が相次いで破綻し、ドルが暴落し金融恐慌もやってきて、著者の主張に耳を傾けるあたいがある本だと思います。ただし、政治学や社会学等をいろいろ広く知った上で読むべき本でしょう。何も知らないでこの著者の本を読むべきではないように思います。この著者の信奉者などになったら、特に若い人などは危険に思います。どのようにして、このような強い個性になったのか知りたくてウィキペディアをみてみました。学生の頃の高い志と実社会に出て荒波をくぐり抜けて、いまは、小金を持ったジジババを相手に利殖の本を書いている自分と、余計なお世話だが、どのように統一しているのだろう?! 若い頃の志は「若気の至り」とでもいうのだろうか?
この本を読んでいて気になったことが二三あります。二酸化炭素の温室効果を正しく理解していないで、60~70年代の大気汚染が地球の温暖化をもたらすように考えている節があります(P85)。それから、Windows というパソコンの基本ソフト(OS)のことを、「インターネットにつなげる基本ソフト」というような記述がありますが(P226)、これも明らかな間違いです。という例に示されるように、著者は、サイエンスに詳しくないのが明らかなように感じました。
本の内容
目先の円安と低金利に騙されるな。やがてドルは暴落し、円は1ドル=80円へ。そして、金融恐慌が世界を襲う。いまこそ資産を金・ユーロ・人民元に移せ。
目 次
第1章 2008年末からドルが大暴落しアメリカ帝国は衰退する
第2章 世界はこうしてドルに騙された
第3章 かくてドル覇権は崩壊していく
第4章 日本はどこまでアメリカに毟られるのか
第5章 アメリカが衰退し、中国が次の超大国になる
著者情報
副島 隆彦(ソエジマ タカヒコ)
1953年、福岡市生まれ。早稲田大学法学部卒業。外資系銀行員、予備校講師を経て、常葉学園大学教授。ベストセラー『預金封鎖』(祥伝社)、『英文法の謎を解く』(筑摩書房)などの著者として知られる碩学。日米の政界・シンクタンクに独自の情報源を持ち、金融経済からアメリカ政治思想、法制度論、英語学、歴史など幅広いジャンルで、鋭い洞察と緻密な分析に基づいた論評を展開。また、副島国家戦略研究所(SNSI)を主宰し、日本人初の「民間人国家戦略家」として講演・執筆活動を続けている
posted by 日下部理恵 at : 2008年11月02日 03:51 | コメント (0) | トラックバック (0) | 読書・本 (68)
☆最近の読書59 『ウォール街のマネー・エリートたち ヘッジファンドを動かす人びと』-<大井幸子/著>
著者/訳者名 大井幸子/著出版社名 日本経済新聞出版社 (ISBN:4-532-16484-2)
発行年月 2004年10月
サイズ 327P 20cm
価格 1,890円(税込)
今年(2008年)9月からあらわになった世界的な金融危機をつうじて感じたことは、経済のグローバル化がすすんでいるこの世の中で、身近な庶民の生活も大きく影響を受けるということです。アメリカ人が、サブプライムローンで住宅を取得したり住宅バブルで現金を取得したりしていたが、一見これらは日本人になんの関係もないものと思っていたことが、昨夏のサブプライムローン問題が顕在化して以来囁かれていた金融危機が現実のものになり、世界的に影響が出始めて庶民は慌てはじめています。何を隠そうその一人が私なのだが、世界の経済・金融の仕組みを知らなすぎると思い知らされました。
金融工学とかヘッジファンドとかを少しでも知るのにこの本を読んでみました。小説仕立てで読みやすいのですが、金融の仕組みとか詳しくは「読んでもよくわからなかった」というのが本音です。金融エリートという人達の生態が描かれていて、私としては、「うんざり」とした気持ちで読んでいました。エリートがすばらしいという気持ちはこれっぽっちも持っていない私としては、読んでいて苦痛そのものだったが読み通しました。それでなにかが得られれば、という気持ちがあったからです。その筋の生活の一端がかいま見られたのは、収穫かもしれません。彼らが世の中の一端を動かしているのは事実だし、それが私たちの生活に大きく影響を及ぼしている事実が許せない気持ちになりました。「ふざけるな!」という気持ちです。この本の最後の方(P316)に「金融危機が津波のように押し寄せてくるその前兆のようなものを感じた。」と主人公が告白しています。この本が出版されたのは、2004年秋でしたが、今日の金融危機を予測していたのでしょうか?!
本の内容
本書は、一九九八年ロシア危機から二〇〇四年七月までの約六年間を時間軸に、ウォール街の投資銀行やヘッジファンド運用会社の経営陣、トレーダー、投資家、そして、運用者と投資家の間に立つコンサルタント、弁護士、国際税理士など、ヘッジファンド業界に携わるさまざまな人びとが往来・交差する模様を描き出す。
目 次
第1章 ロシア危機
第2章 ノン・ランダム・ウォーク理論
第3章 ファンド・レイジングの新展開
第4章 ITバブル崩壊と九・一一テロ
第5章 ファニー・ファンドの新ビジネス
第6章 ヘッジファンドの新潮流
第7章 アメリカ社会に生きる
第8章 ヘッジファンドの進化
第9章 リスク・コントロール
著者情報
大井 幸子(オオイ サチコ)
1981年、慶応大学法学部政治学科卒業。83年、同大学院経済学研究科修士号取得。85年からフルブライト奨学生としてアメリカのスミス・カレッジとジョンズ・ホプキンズ大学院高等国際問題研究所に留学。87年、慶応大学大学院経済学研究科博士課程修了後、明治生命保険国際投資部勤務。89年、格付け機関ムーディーズ社へ転職。以後ニューヨークのリーマン・ブラザーズ、キダー・ピーボディにて債権調査・セールスを担当。2001年4月、Strategic Alternative Investment Logistics(SAIL),LLCをニューヨークに設立。現在、同社マネージング・ディレクター
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2008年09月23日
☆最近の読書58 『アジア三国志 中国・インド・日本の大戦略』-<ビル・エモット/著>
著者/訳者名 ビル・エモット/著 伏見威蕃/訳出版社名 日本経済新聞出版社 (ISBN:978-4-532-35313-1)
発行年月 2008年06月
サイズ 401P 20cm
価格 1,890円(税込)
読み応えのある本です。例えば、北朝鮮の金正日の重病説(脳卒中?)がつい最近報道されていますが、彼がもし亡くなった場合、どういうことが起こるか、考えたことがあるだろうか。大混乱が起こる可能性は高い。一番影響があるのは韓国だから、韓国の報道は、金正日が回復しつつあると報道しているが、アメリカ当局者はそのようには見ていない。当然日本にも大きな影響があるだろう。P314 あたりに書かれているので、それを参考にいろいろ考えてみるのは、いまだからこそなおさら重要だろう。
北京オリンピック前のチベット問題に対する抗議行動が盛んに行われていましたが、そもそも「チベット問題」とはいかなるものなのか、ということも書かれています。「2007年に中国政府が、チベットの高僧の転生すべてを政府が取り仕切るというあらたな規制をもうけた P296」と書かれていいるが、どうなんだろう、私はあ然としてしまいました。中国に宗教の自由はない、といってしまえばそれまでだが、チベットの人達は納得いかないだろう。こういう事実を一つ一つ知っていけば知っていくほど、中国の矛盾を感じられるわけです。もちろん、日本についても書かれています。
中国とインドは、1962年、国境をめぐって紛争が起こった。国境問題も書かれていて、歴史的にも複雑であるが、分かり易く書かれている。もちろん、日中間にも尖閣諸島をめぐる問題で、中国側は自国の領土だと主張している。
本の内容
21世紀の主導権と巨大な権益を巡り、三つどもえの争いを繰り広げるアジア3大国—中国、インド、日本。かつて一度も、アジアで強国が3カ国も共存したことはない。この混迷の時代を、世界とアジアはどう乗り切るべきか?3大国の均衡状態が崩れるとき、グローバル経済と国際政治に何が起きるのか?アメリカに対抗しうる大国の地位を、アジアの一国が手に入れるとき、世界はどう揺れ動くのか?国家戦略を現地取材から描き出し、21世紀アジアの巨大な可能性と、その裏に潜むリスクを解説。大ベストセラー『日はまた昇る』の著者が満を持して放つ最新作。
目 次
第1章 アジアの新パワー・ゲーム
第2章 アジア創造
第3章 中国—世界の中心の国、問題の中心
第4章 日本—パワフル、脆弱、老齢化
第5章 インド—数が多く、ごたまぜで、勢いに乗っている
第6章 環境問題—中国・インドの成長の壁
第7章 横たわる歴史問題
第8章 発火点と危険地帯
第9章 アジアのドラマ
著者情報
エモット,ビル(Emmott,Bill)
ジャーナリスト。1956年イギリス生まれ。80年に英「エコノミスト」誌ブリュッセル支局に参加。ロンドンでの同誌経済担当記者を経て83年に来日、東京支局長としてアジアを担当。86年に金融担当部長として帰国、その後ビジネス部門編集長となり、1993‐2006年、同誌編集長を務める
伏見 威蕃(フシミ イワン)
翻訳家。1951年生まれ、早稲田大学商学部卒。トーマス・フリードマンの『フラット化する世界』では、訳文の完成度の高さを評価されて第1回国際理解促進図書・優秀賞を受賞
posted by 日下部理恵 at : 2008年09月23日 15:32 | コメント (0) | トラックバック (0) | 読書・本 (68)
2008年08月08日
☆最近の読書57 『ムツゴロウの遺言』-<三輪節生/著 石風社>
著者名 三輪節生/著出版社名 石風社 (ISBN:4-88344-070-2)
発行年月 2001年05月
サイズ 284P 19cm
価格 1,890円(税込)
この本は、長崎県諫早市近辺の諫早湾干拓事業をめぐる問題点を書いた本です。同時に諫早湾の持つ自然の豊かさも書かれています。地元に住んでいない私たちは、テレビニュースなどで干拓事業を進めるために作られた潮受け堤防の水門を閉じる「ギロチン」の映像で記憶に残っている人は多いと思います。
問題が多いこの公共事業をなぜごり押しするのか?、疑問を感じてこの本を手にしてみました。必要性の少ない公共事業の問題点がぎっしり詰まった典型として「諫早湾干拓事業」が描かれています。更に、諫早湾周辺の干潟の持つ浄化能力の高さが何度も書かれています。干潟の浄化能力というのは、人々はあまり知らないのではないでしょうか。私も今回この本を読んではじめて知りました。干潟をつぶして下水事業に莫大な予算をつぎ込まねばならない地方自治体の転倒したやり方に怒りも覚えるくらい、この事業はクレージーさがあふれています。
干潟の浄化能力といのは、簡単に言えば干潟に住む無数の貝類やカニ、ゴカイを含む底生生物が有機物を餌にする。そして、泥に穴を掘りその穴に酸素が供給され腐敗を防いでくれる。無数の貝類を水鳥たちが餌にする。という循環で水質が浄化されるというメカニズムです。
この事業につぎ込むお金は、約2500億円。この予算をつぎ込むなら、その予算の数分の一で川の堤防補強などや排水ポンプの設置をして洪水対策をした方が合理的だ、というのが著者の主張です。農地だって、いまでは全国にあまっている。無理して干拓事業をする合理的な理由は無しだ。推進派は、長崎県と諫早湾周辺の市町村自治体と農民。大きな被害を受けているのは、漁業者たち。「よそ者が口を挟むな」という偏狭な根性も気になるところです。
希少種の渡り鳥が、干潟をつぶすことで激減した事実も出てきます。心が痛みます。諫早湾というのは、たくさんの渡り鳥の中継地でもありました。
この本を読んでいて率直に感じた感想は、繰り返しが多い。同じ記述が何度も出てきて閉口してしまいました。もっと圧縮できたのではないか。
本の内容
「防災」と「優良農地造成」の旗印を掲げた諫早湾干拓事業は、2000年の記録的なノリ不作問題をきっかけに、国内の世論を喚起した。膨張する事業費、疑問多き防災機能、干潟本来の浄化能力を無視した水質保全計画、必然性のない農地造成・・・本書は「長崎大干拓」「南総計画」といった干拓構想の変転の経過から、漁業被害の実態、住民運動の軌跡、さらには、「生命の海」を育んだ生き物達の生態まで、問題の全体像を総覧しつつ、隘路に陥った干拓事業を多角的に検証する。
目 次
序章 干潟はどこへ行く
第1章 諫早湾干拓事業 我々は何を失ったのか
第2章 生命の海
第3章 海とともに 諫早市周辺のまち
第4章 諫早湾の生き物たち
第5章 事業のための事業
第6章 闘い 干潟は取り戻せるか
終章 そして干潟は・・・
資料
参考文献
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2008年08月03日
☆最近の読書56 『宗教からよむ「アメリカ」』-<森孝一/著 講談社刊>
著者/訳者名 森孝一/著
出版社名 講談社 (ISBN:4-06-258070-5)
発行年月 1996年03月
サイズ 278P 19cm
価格 1,890円(税込)
大変よい本だと思います。アメリカを理解するには、この手の本を読んでいないとダメだろう、とも思います。
アメリカ人の無邪気な価値観、とりわけ民主主義についての理解を、いやーな思いで見ていたことはないだろうか? 民主主義を普遍的な原理と信じ切っているところに、私なんか違和感をおぼえる。民主主義といっても、所詮支配層のための民主主義であって、貧困層の民主主義じゃないのは、ちょっと考えればすぐわかるものだ。選挙に出るのに、貧困層から選挙に立候補したと聞いたこともないし、実例もない! 選挙には金がかかるのだ。いま現在、アメリカの民主党の大統領候補を選ぶ予備選挙が盛んに行われているが、オバマもクリントンも潤沢な選挙資金を持っている。草の根からお金を集めるか(オバマ候補)、銀行からお金を調達するか(クリントン候補)の違いはあるものの、いずれの候補もたくさんの金を使って選挙戦を戦っている。
この民主主義を広めるという大義名分(大量破壊兵器を隠し持っている、ということも大義名分であった!)でもってイラク戦争を戦って、まる5年が経つイラク情勢を考えると、カオスしか見えてこない。
イラクに限らず、民主主義と市場開放をペアにして世界各国に迫ってくるアメリカ的価値観とはなんぞや、と時々考える。
アメリカ的価値観(民主主義、キリスト教と共和制)これらの価値観を持って「世界の警察官」としての振る舞い、それを規定している基底的価値観を確立したのが、著者によれば1898年の米西戦争(キューバの独立をめぐるアメリカとスペインの戦争)前後からの「社会的福音運動」家でプロテスタントの牧師、ジョサイア・ストロング(1847~1916)であるという。その当時の代表的なプロテスタントの牧師。今日のアメリカの価値観をつくった代表的な人物だという。アメリカの帝国主義的な膨張政策に、キリスト教の側から正当化の理論を提供した人物。この人物をめぐる分析はなかなか興味深いものがあります。本書を読んでもらいたい。
セクト的宗教そのもの、例えば、モルモン教、アーミッシュ、人民寺院、ブランチ・デビディアンに興味を持ってこの本を読む場合もあるでしょう。特に、人民寺院、ブランチ・デビディアンでは、集団的自殺、銃撃事件があったので記憶に残っている人もあるでしょう。人民寺院の場合、初めはまともな理念があって宗教としてそれに対処していったのだが、いろいろな経緯があって、行き詰まり集団的自殺にまで追いつめられていく。その経緯を読んでいくと、集団的自殺まで行くのも、ある意味で納得いくわけです。悲劇的結末だけがセンセーショナルに取り上げられるのは問題だが、経緯を追って問題をたどっていくと理解はできる。ただ、やはり宗教の恐ろしいところとでも言うか、破壊力はすさまじいものがある。ブランチ・デビディアンでは、合法的に武装していた。ここが、アメリカ的なところだが、オウム真理教は、非合法で武装していた。どうしてもアメリカの新興宗教と日本の新興宗教を重ね合わせて考えてしまう。宗教とは、国籍に関係なく宗教的な法則があるように感じる。教義があって、信者がいて、布教活動があって、終末思想があって、社会との軋轢があって、社会との折り合いをつけていく場合もあれば、社会と鋭く対立する場合もあって、いろいろあるのだ。人民寺院とブランチ・デビディアンのところを読むと、オウム真理教のことをおもわずにはいられない。ひょっとして、事態の推移によっては、オウム真理教の集団的自殺や首都中枢を乗っ取ることだってありえたのではないか、とさえこの本を読むと思えてくる。もちろん、この本にはオウムのことはほとんど出てきませんが、同じ宗教ということで、私が想像しているわけです。
モルモン教、今日ではアメリカの政府中枢にもモルモン教の信者がいるようだが、この人達は、今日一言でいえば宗教的右翼とよばれるファンダメンタリズムの人達と呼ばれるらしい。モルモン教は、1830年うまれだから比較的新しい宗教だ。といっても、キリスト教の一派と考えればよいみたいだ(ただ、アメリカの世論調査機関ギャラップなどは、モルモン教をキリスト教の一派に含めない)。最初の頃は、奴隷解放のリンカーン大統領もモルモン教を攻撃していたらしい。彼らの教義にポリガミー(一夫多妻制)があったかららしい。世間との軋轢が生じてくる。この軋轢とどのように折り合いをつけていくかによって教義も変わってくるものだ。その結果、いまでは最も保守的右翼的にファンダメンタリズムにまでなっている。日本の地方都市でも布教活動をしているが、私の推測だが、布教活動で成果を上げるというよりむしろ日本の民衆の動向を調査(広義のスパイ活動)しているものと思われる。大航海時代のキリスト教布教と植民地支配の先兵としての役割を想起してもらいたい。
アメリカには国教というものがない。合衆国憲法修正第一条に、国教会制度を廃止し政教分離と信教の自由を保障したのだが、著者は、この本で最も主張したいことは、「アメリカの見えざる国教」があって、これを見ないとアメリカの分析はできないよ、という主張を展開している。「アメリカのナショナル・アイデンティティを形成している「核」、それが「アメリカの見えざる国教」である。」(p99) 内容は、本書を読んでいただきたい。
思いつきを羅列してきましたが、この本は基本的な文献ともいっていいでしょう。一度読んでおきたい本です。尚、この本を知ったきっかけは、西谷修/著 以文社刊『「テロとの戦争」とは何か 9.11以後の世界』に書かれていたからです。
明らかな間違いが二カ所あった。これは、第一刷り本です。
p50「1740年代に本国イギリスでおこったピューリタン革命」という記述がありますが、これは、1640年代でしょう。
p191「1919年、アインシュタインは相対性理論を発表した」とあるが、1905年に特殊相対性理論、1916年に一般相対性理論を発表の間違えです。
本の内容
モルモン教、アーミッシュ、ファンダメンタリズム…。アメリカはさまざまな「信仰」がせめぎ合う社会である。それらを統合するものとは、いったい何か?悩みつつも、新たな理念を求めて進む、超大国の意外な姿をあぶり出す。
目 次
第1章 アメリカの「見えざる国教」
第2章 セクト的宗教と「見えざる国教」
第3章 アメリカのファンダメンタリズム
第4章 「アメリカの夢」の行方
posted by 永井花風 at : 2008年08月03日 16:40 | コメント (0) | トラックバック (0) | 読書・本 (68)
2008年08月02日
☆最近の読書55 『アメリカの高校生が読んでいる経済の教科書』-<山岡道男/著 浅野忠克/著>
著者/訳者名 山岡道男/著 浅野忠克/著出版社名 アスペクト (ISBN:978-4-7572-1476-7)
発行年月 2008年04月
サイズ 239P 21cm
価格 1,680円(税込)
この本は、単にアメリカの教科書を翻訳したものではなく、日本の実情にあったかたちでアレンジされているので違和感なく読むことができます。内容は、高校レベルの知識ですが、実用性が高く重要な概念・用語は何度も繰り返して書かれているので勉強に役立つように書かれています。経済の基礎知識を身に付けたい人には、社会人でも実用になる内容です。
本の内容
アメリカでは、高校生からパーソナルファイナンスを学ぶ!金利、貯蓄、投資、税金、保険、需要・供給、株式、債券、リスク、リターン、トレードオフ、インフレ、デフレ、起業、インセンティブ、費用、便益、GDP、輸出・輸入、為替レート。NCEE(アメリカ経済教育協議会)のスタンダード20を日本人向けにアレンジ。経済とお金のことがすらすらわかる!
目 次
第1章 家計の経済学—どうすればお金を増やせるのか?(希少性—資源は有限、人間の欲望は無限
インセンティブ—人間の選択は損得に左右される ほか)
第2章 企業の経済学—経営者は利潤の最大化を目指す(起業家—より大きな報酬のために起業する
企業—個人的欲望の充足V.S.利潤の獲得 ほか)
第3章 金融の経済学—銀行から上手にお金を借りる方法(家計と銀行—あなたの信用で利息は決まる
企業と銀行—銀行はお金の仲介者 ほか)
第4章 政府の経済学—政府も市場も失敗をする(パーソナルファイナンス国債編—国債の利回りで景気がわかる
財政政策—政府は企業の代わりに公共財を作る ほか)
第5章 貿易の経済学—日本は再び鎖国できるか?(貿易—自由貿易は世界全体の生活を豊かにする
外国為替相場—為替レートは通貨の需要と供給で決まる)
著者情報
山岡 道男(ヤマオカ ミチオ)
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。1948年、東京生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科博士課程中退。学術博士(早稲田大学)。専門は、アジア太平洋地域の国際交流論、経済学教育論
淺野 忠克(アサノ タダヨシ)
山村学園短期大学コミュニケーション学科専任講師。1951年、東京生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。専門は、国際経済学、経済教育論、高等教育論
posted by 日下部理恵 at : 2008年08月02日 02:15 | コメント (0) | トラックバック (0) | 読書・本 (68)
